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一枚の桐の板にたった一本の絹の絃を張っただけの一絃琴は日本の楽器である。「一絃の琴」の記述が日本の歴史に登場するのは日本後紀巻八「三河の国に漂着した崑崙人(こんろんじん)が一絃の琴を携えていた。その声は哀しげであった」というものだが、この楽器が今の形の一絃琴と同じ物かわかっていない。
現在の形の一絃琴の起源は諸説あり、江戸時代中期に中興の祖として覚峯阿闍梨(かくほうあじゃり)が現れる。「中興の祖」ということはそれ以前から一絃琴は存在したということになるわけである。江戸時代後期には武士、貴族、文人などによって東洋哲学的な側面を持ちながら盛んに弾き継がれるようになる。
一絃琴の音色、特に減衰していく音の先に耳を傾けていくと、耳が研ぎすまされ、心がゆっくりと平かになっていくことがわかる。と同時にその場の静けさを感じることができる。一絃琴は楽器でありながらその場が静かであること、「音がないこと」を表す楽器なのではないかとと思うようになった。(峯岸一水) |
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